ここで、一旦基本の基本に立ち返ってみたいと思います。
 
小学校で習っていた「算数」
中学校以降で習う「数学」
一体何が変わったのでしょう。


大きく変わった点は、2つです。

「-」世界が倍に広がった。
「=」式の概念が変わった。

意外と少ないんですね。
でも、これがとても大きな変化でした。


「-」世界が倍に広がった。

「算数」では「-」は「引く」と読み、引き算(減算)の演算記号でした。
それが「数学」になると「マイナス」と読むようになります。
この違いはなんなのか。

~数字に「方向性」が加わった~

小学校の数直線は、こんな感じです。

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0から始まって無限大までずーーーっと伸びていきます。
でも、あれ?
直線って「両端が決まっていないまっすぐな線」じゃなかったっけ?
そうなんですよ。
厳密に言ったら、小学校で出てきた数直線は、いわば「数半直線」ですよね。
片方の端っこが決まってますから。

ということで、ほんとの数直線は、これです。

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0から、+方向にも-方向にも無限にずーーーっと伸びてます。
この「-方向」の世界が入って来るのが、中学校からなんですね。
 

・マイナスの数(負の数)の+-×÷(加減乗除)

もうね「こんなの当たり前じゃん」って言われるのはわかりきっているんですけどね。
一度「なんでそうするのか」という根本の原理をおさらいしておきましょう。
感覚的にも納得することが、ミスをしなくなるコツの一つです。


~足し算引き算~

数には「正の数(プラス)」「0」「負の数(マイナス)」と、三つのパターンに分かれます。
「0」は足しても引いても変わらないので、無視しましょう。
これらの足し算引き算は、この8パターンですね。

プラス  + プラス  →(+3)+(+5)
プラス  + マイナス →(+3)+(-5)
マイナス + プラス  →(-3)+(+5)
マイナス + マイナス →(-3)+(-5)
プラス  - プラス  →(+3)-(+5)
プラス  - マイナス →(+3)-(-5)
マイナス - プラス  →(-3)-(+5)
マイナス - マイナス →(-3)-(-5)

まず、整理しましょう。

①「+」は省略することができる。

(+3)+(+5)→3+5
「+」は、できるだけ省略していきましょう。
ただし、省略しすぎないこと。+か-は必ず一個残るようにします。
(+3)+(-5)→3-5
(+3)-(+5)→3-5
これ、同じ結果になりますね。

②「-」が重なった時は「+」に変わる。

(+3)-(-5)→3+5
(-3)-(-5)→-3+5

この二つが式の整理の基本です。

では、なぜこのようにできるのか。
これは「方向」が関係してきます。



+方向を向いて後ずさりしても、-方向を向いて前進しても、-方向に移動します。
同じように、+方向を向いて前進しても、-方向を向いて後ずさりしても、結局+方向に進むと言うわけです。
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さて、整理したら。

整理したら、計算していきます。
・左から順番に計算していく。
・引き算は、絶対値の大きいほうから小さいほうを引き、絶対値の大きいほうの符号をつける。
まぁ大抵こんな感じなんじゃないかと思いますが・・・。


やはり効率の良いやり方をしていきましょう。
 
・まず、+や-といった符号の前で区切る
・もし、+と-それぞれに同じ数があったら、相殺できるので消す。
+の数は+の数、-の数は-の数で合計する。
+の数の合計と、-の数の合計を計算する。

スポーツなんかの試合だと考えるとわかりやすいかもですね。
+の数は、+チームの得点、-の数は-チームの得点。
それぞれの総得点を出し、どっちのチームが何点差で勝ったか、と言うのがこの計算です。
 
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正負の数の足し算引き算は、
①符号を整理する。
②両チームの総得点を出し、どっちが何点差で勝ったか計算する。
これでOKです。


~掛け算割り算~

ここでも「0」は無視します。
0を掛けたら答えは0だし、0で割ることはあり得ない(答えがない)からです。
割り算というのは、逆数を掛けることと同じなので、掛け算と同じ法則になります。
さらに、掛け算は「掛ける数」と「掛けられる数」を入れ替えても答えは変わらないので、
ここで出てくる計算のパターンは、この3パターンです。

プラス同士の掛け算   →(+3)×(+5)
プラスとマイナスの掛け算→(+3)×(-5)とか、(-3)×(+5)
マイナス同士の掛け算  →(-3)×(-5)


①プラス同士の掛け算

これは小学校でやってきた、普通の掛け算ですね。
1個10円のチョコを3個買った金額は?
10×3=30
とか、
毎月300円ずつお小遣いを貯金していくと、4ヵ月後にはいくら増える?
300×4=1200
とか、そういう計算ですね。
 

②プラスとマイナスの掛け算

-10円とか、-3個とかは考えづらいので、お小遣い貯金の例で考えてみましょう。
毎月300円ずつお小遣いを貯金しています。4ヶ月前は?
300×(-4)=
毎月300円ずつ貯金をおろして行きます。4ヶ月後は?
-300×4=
こういうことになります。

上の問題では、毎月300円ずつ増えている状況で、4ヶ月前なので、今より1200円少ない状況のはずですね。
ということで、
300×(-4)=-1200
下の問題は、毎月300円ずつ減っている状況で、4ヶ月後なので、今より1200円減ってしまっているはずです。
ということで、
-300×4=-1200
どちらも答えは同じで、マイナスです。
そして数字(絶対値)の部分は、プラス同士の掛け算の時と同じになっています。

つまり、プラスとマイナスの掛け算は、
答えはマイナスで、数字は普通に掛け算する。
ということです。

③マイナス同士の掛け算

マイナスとマイナスを掛けるのだから、もう超マイナススーパーマイナスになりそうな気がしますよね。
しかし、これが違うんです。これも、お小遣い貯金の例で考えてみましょう。
 
毎月300円ずつ貯金をおろして行きます。4ヶ月前は?
-300×(-4)=
こういうことです。
毎月300円ずつ減っている状況で、4ヶ月前なので、今よりまだ1200円多い状況のはずですよね。
ということで、
-300×(-4)=1200
なんとプラスになってしまいました。

つまり、マイナス同士の掛け算は、プラス同士の掛け算と答えが同じになるんです。

まとめると、
プラス同士、マイナス同士は答えがプラス
プラスとマイナスを掛けると、答えはマイナス、というわけです。
 
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なんか、足し算引き算の符号整理と似ていますね。


ということで、実際に計算する時は・・・?

プラスの数字やマイナスの数字が入り乱れて、しかも掛け算割り算入り乱れている計算の場合、いちいち左から計算していてはめんどくさいですよね。
そういう時は、このように一気にやってしまいましょう。


①まず、答えの符号を決める
 
一連の計算の中にあるマイナスの数を数えます
マイナスが2個あればプラスになるので、マイナスの数が偶数だったら、答えはプラスです。
奇数だったら、答えはマイナスになります。

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②大きな分数を作って、一気に計算。
 
答えの符号が決まったら、もう計算中に符号を気にする必要はありません
一気に大きな分数を作って、約分できるところは約分して計算をします。
(もちろん、計算の中に分数や割り算が登場していなければ、分数にする必要はありません)
 
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中学で初登場し、世界を一気に倍に広げた「マイナスの世界」は、ここまでを把握していれば問題なく使いこなせます。


【重要】

計算の技術としては「加減乗除(+-×÷)」の4種類だが、
計算の戦略としては「加・乗(+×)」の2種類のみ!

マイナスの数が登場したことで、引き算は「マイナスの数を足す」のと同じだという事がわかりました。
また、割り算は「逆数にして掛ける」のと同じでした。
ということは、計算の考え方としては、足し算と掛け算だけで全部表せることになります。

こうすると、何が良くなるのか。

「順番を自由に入れ替えられる」という事です。 

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足し算と掛け算では、掛け算が優先なので、
まずは足し算ごとに区切って、
掛け算の処理をしてから足し算をやってしまえば、
楽に間違わずに計算ができる、と言うわけです。
 
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このように、計算は「整理して行う」ことが一番大事な戦略です。

※もちろん、実際に「マイナスの数を足すとき」や「約分するとき」に、引き算や割り算の技術は必要になります。
技術として使わなくなることはないので、練習はしておきましょう。

 


「=」式の概念が変わった。

「算数」では「=」は「は」と読み、「さぁ計算しなさい」とばかりに問題の最後に書いてありました。
こんな感じ。
 
32+15=
3×2=
64-23=
17÷4=
 
それが「数学」になると「イコール」と読むようになります。
この違いはなんなのでしょう。


~結構大きく立ち位置が変わっている~

「算数」では、
「=」までが「問題」で、「=」の後に「答え」を書く。
「問題」=「答え」
こんなイメージでした。
しかし「数学」では、「=」の左右に明確な違いはありません。
「=」は単に、「左側と右側は同じだよ」という意味だけです。
つまり、上皿天秤みたいなもんですね。
 
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と、いうことは。

左右が同じ、釣り合っている、という意味合いだけであるなら、
「左右両方から同じ数を引く」
「左右両方に同じ数を足す」
こんなことをしても、釣り合うはずですよね。
 
また、
「左右両方に同じ数を掛ける」
「左右両方を同じ数で割る」
こんなことをしてもOKという事です。

無題


こうやって、式をいじることができるようになったことで、問題を解決する方法が飛躍的に楽になりました。
それを利用しているのが「方程式」「関数」なのです。

例:
太郎くんが家でヒマしていると、部屋に弟の次郎くんの海パンが落ちているのに気付きました。
「なんだと!?次郎は友達とプールに行くといっていた。海パンがなければ次郎は・・・!」
海パンを手に取ると、
まだあたたかい。そう遠くには行っていないはずだ!」
太郎くんは急いで家を飛び出し、チャリに乗って次郎くんを追いかけました。
「次郎の歩く速さは分速60mだ。そして俺のチャリは、本気を出せば分速260mは出せる。
 そして俺が追いかけ始めたのは次郎が家を出てちょうど10分後だ。
 よし、間に合うはずだ!間に合え!」
さて、太郎くんは何分後に次郎くんに追いつき、海パンを手渡せるでしょう?

「算数」での解き方

まず、太郎くんが追いかけ始めた時点で次郎くんがどれだけ家から離れているかを計算します。
 
分速60mで10分なので、
60×10=600
600mの差がついています。
 
太郎くんは1分あたり260m進み、次郎くんは1分あたり60m進むので、
260-60=200
毎分200mずつ差は縮まっていきます。
 
600m差がついていて、1分あたり200m差が縮まるので、
600÷200=3
3分後に追いつきます。
 
答え 3分後


「数学」での解き方

太郎くんが追いつくまでの時間(分)をxとおきます。
 
太郎くんが追いつくまでに進む距離は、(260x)m
次郎くんが追いつかれるまでに進む距離は、(60(10+x))m
 
追いつくと言う事は、進んだ距離が同じと言う事なので、
260x=60(10+x)
 
これをxについて解くと、
260x=600+60x
260x-60x=600
200x=600
x=3
 
答え 3分後


「算数」だと、解くための手順を考えながら計算をしていきますが、
「数学」では、わからない数をxと置いて式をつくり、
あとは解くだけなので、手順や立式がだいぶ簡単です。

「算数」ではかなり特殊な考え方や手順を使って計算をするものもあるのですが、
「方程式」を使うことで一気に単純化できるんですね。

「=」の立ち位置が変わった「数学」は、「算数」に比べてかなり便利に、楽する事が出来るツールだということが言えると思います。